ロオジエのこだわり

2024年7月19日

【マイクロバイオーム農法の「銀の鴨」】最良の食材を求め続けるシェニョンシェフは5月末、青森県の南端に位置する「新郷村」を訪れました。キリスト伝説が残る人口約2000人の不思議な村には美味しい水が豊富に湧き出ています。その豊かな自然に囲まれた場所で「銀の鴨」が大切に育てられています。この村でも、シ...MORE

2023年4月10日

【ロオジエ卵プロジェクト】シェニョンシェフが推進している「マイクロバイオーム農法」*¹の「サステナブルな卵プロジェクト」がようやく実を結び、マイクロバイオーム農法で作られた卵がロオジエのメニューの一品に登場しました。それは佐賀県伊万里市の養鶏場の純国産鶏「もみじ」の卵です(日本の採卵鶏の95%以...MORE

2022年12月19日

【ロオジエ オヴェルデ エクストラバージンオリーブオイル】~「マイクロバイオーム農法」と「マイクロバイオーム・ガストロノミー」~10月下旬、シェニョンシェフはスペイン南海岸のアリカンテにある「オヴェルデ王国」をオリーブの収穫のために訪れました。1年のうち345日間も太陽が降り注ぐと言われるだけあ...MORE

2022年11月10日

【ロオジエのエディブルフラワー】今回シェニョンシェフが訪れた生産地は、長崎県松浦市のエディブルフラワーの農園。海が見渡せる眺望の良い集落の中に、食べることができる花、エディブルフラワーの温室があります。生産者の前田さん家族は先代から園芸用の植木を栽培していましたが、食用花に魅せられてからは、一年...MORE

2022年6月10日

【フィンガーライム(シトロン・キャビア)の魅力】オリヴィエ・シェニョンがこだわっている食材のひとつがフィンガーライムです。指の形をした柑橘類「finger lime」は、プチプチとした果肉の食感がキャビアに似ていることから、フランス語では「citron caviar (英語:caviar lim...MORE

2021年11月17日

【ロオジエオリジナルティー/Tea for two project~紅茶を通じたSDGsの取り組み~】エグゼクティブシェフのオリヴィエ・シェニョンが「旅するコンセプト」でロオジエオリジナルティーを生み出しました。オリヴィエ・シェニョンはスリランカの女性たちが自立できるよう、20年以上前から女性の...MORE

2020年11月27日

【ロオジエの持続可能なガストロノミー】「美しい環境を守らなければ、美しい食材を得ることができず、美しい食文化も次世代に残せない」という危機感を持ちながら、「食」という側面から、サステナブルな取り組みを本格的に進めています。使われる多くの食材は持続可能な漁を実践している一本釣りの魚であり、環境に配...MORE

2020年3月24日

【FROM OCEAN TO PLATE —— 持続可能な漁を考えるロオジエのひと皿】 オリビエ シェニョンが得意とする魚料理のひとつに、長崎県産の“ハタ”や“クエ”を使った「のり巻き風スタイル」と呼ばれるアラカルトメニューがあります。 たとえば、今年2月に登場した 「海苔巻きに見立てたハタと黒...MORE

2019年8月27日

【しなやかに空間と呼応する、D.ポルトー社のテーブルリネン。】ロオジエのテーブルウェアに散りばめられる数々のストーリーの中から、ピュイフォルカのカトラリーに次いでご紹介したいのは、D. ポルトー社のテーブルリネンにまつわるお話です。ロオジエのサービススタッフひとりひとりが、日々心を配るテーブルリ...MORE

2018年10月25日

【手から手へ。心を伝えるカトラリー】ロオジエの“心”を表現するうえで、欠くことのできないパートを担うのが「ピュイフォルカ(PUIFORCAT)」のカトラリーです。「ロオジエ」では1999年 銀座・並木通りへの移転を機に、店で扱うすべてのシルバーをフランスの老舗銀器メゾン「ピュイフォルカ」に統一。...MORE

2018年4月25日

【驚くほどの存在感。オホーツクの海で出会った「北海道産毛ガニ」】「ロオジエのこのひと皿が食べたくて」という声をいただく料理のなかでも、初春から初夏にかけてのこの時期、ご予約の際に特にリクエストいただく人気のひと品が「北海道産毛ガニ」を使ったアラカルトの数々です。たとえば3月末頃から5月頃にかけて...MORE

2017年11月10日

【八海山サーモン】2017年春の出合い以降、エグゼクティブシェフ、オリヴィエ・シェニョンが虜になった食材のひとつに「八海山サーモン」がある。その呼び名に“鮭”を思い浮かべるのだが、実の正体は虹鱒(ニジマス)。もちろん想像に難くなく、一般的な虹鱒とはかなり異なる手法で育てられた魚種で、銘酒の名称で...MORE

2017年7月24日

【くまもとあか牛】松阪牛や近江牛、神戸牛など、特に90年代以降の高級和牛ブームをけん引してきた“日本三大牛”をはじめ、米沢牛、飛騨牛、岩手や北海道の短角牛、近頃では赤身肉ブームなどの波に乗りニュージーランド牧草牛やフランスのシャロレー牛などの人気も高まっている。その数ある選択肢のなかから、当店エ...MORE

2017年4月27日

【自然への敬意を感じずにはいられない、素晴らしき「海からの贈りもの】「黒鮑(あわび)のバターポッシェ」と言えば、2013年の「L'OSIER」リニューアルオープン以来、エグゼクティブシェフ オリヴィエ=シェニョンのスペシャリテとして多くの人の心を捉えてきた料理のひとつ。この料理は1年を通じて“最...MORE

2024年7月19日
【マイクロバイオーム農法の「銀の鴨」】

最良の食材を求め続けるシェニョンシェフは5月末、青森県の南端に位置する「新郷村」を訪れました。キリスト伝説が残る人口約2000人の不思議な村には美味しい水が豊富に湧き出ています。その豊かな自然に囲まれた場所で「銀の鴨」が大切に育てられています。この村でも、シェニョンシェフが推進する「マイクロバイオーム農法」が実践されているのです。
「銀の鴨」代表の畑中さんはマイクロバイオーム農法を可能にする“アクアビオータ”を餌に混ぜ、鴨に与えています。視察に訪れたシェニョンシェフに、畑中さんがマイクロバイオーム農法の魅力を話してくれました。

「“アクアビオータ”の餌を食べている鴨の成長速度は驚異的です。免疫力も当然強化されていると思います。鴨たちの顔つきが以前と全く違うんですよ!早くも幼鴨の印である黄色い幼毛もなくなりましたし、乳酸菌の力を感じますね。」と35年間、鴨を飼育し続けている畑中さんが清潔で広々とした環境で育つ鴨たちを前に、従来の餌との違いを語ってくれました。
病気を防ぐための抗生物質が与えられることなく、乳酸菌とその代謝物の力により、家畜が自然に免疫力を付けることができるマイクロバイオーム農法。自然環境を守りながら、家畜を健康に育てることができ、かつ、食材生産者と消費者の健康を第一に考えることができる農法です。
「銀の鴨」はフランス産の鴨と同じバルバリ種。ロオジエの定番の食材となりました。大切に作り上げられた希少な食材を慈しみながら、敬意をもって、シェニョンシェフはひと皿ひと皿を提供しています。
2023年4月10日
【ロオジエ卵プロジェクト】

シェニョンシェフが推進している「マイクロバイオーム農法」*¹の「サステナブルな卵プロジェクト」がようやく実を結び、マイクロバイオーム農法で作られた卵がロオジエのメニューの一品に登場しました。
それは佐賀県伊万里市の養鶏場の純国産鶏「もみじ」の卵です(日本の採卵鶏の95%以上は外国鶏)。黄身の色が薄いと感じるかもしれませんが、黄身の色は鶏がどんな餌を食べているかで変わります。
飼料メーカーの配合飼料を使用せず、地元の農家や漁師と協力して、伊万里ならではの自然由来の餌作りが行われています。その餌に「マイクロバイオーム農法」を可能にする「アクアビオータ(乳酸菌とその代謝物)」*²を混ぜています。「アクアビオータ」を食べている鶏のケージの死亡率はなんと0%。鳥インフルエンザが猛威を振るっている中でも、新飼料を給餌している農園の鶏は死亡率0を記録しており、新飼料による効果が見られます。
また、この農園では1平方メートルに1羽というのびのびとした環境で自然に近い環境を整えているので、鶏がストレスなく元気に育っています。

シェニョンシェフは佐賀県から届く新鮮な卵を手に取りながら、熱く語ります:
「マイクロバイオーム農法に関心を寄せてくださった卵の生産者さんと協力して生まれたこの卵。私が提唱している「マイクロバイオーム・ガストロノミー」を可能にする食材の一つです。生産者さん達との出会いの中から、美味しいだけではなく、健康にインパクトをもたらす食材を共に生み出せたことに喜びを感じています。こうした取り組みに対して、これからも生産者さん達から賛同を得られるよう働きかけていきたいと思っています。」

*¹
200種のラクトバチルス属乳酸菌の中から厳選して作られた乳酸菌とその代謝物のプロダクト「アクアビオータ」を使って行われる農法が「マイクロバイオーム農法」。野菜の場合は「アクアビオータ」を土壌に撒くことで独自の微生物の生態系が生まれ、化学肥料や農薬を使わなくとも、害虫を寄せ付けない有機農業ができるという仕組み。「マイクロバイオーム農法」で作られた食材はビタミン・ミネラル等の栄養価を豊富に含む。この農法で作られた食材を最大限に使って調理することにより、「健康と長寿」を可能にする「マイクロバイオーム・ガストロノミー」が生まれる。
*²
微生物の生態系から着想を得て作られた「アクアビオータ(Aquabiota)」はイノベーションラボ(東京都中央区)が開発した乳酸菌のブレンド。サステナブルな卵プロジェクトでは、アクオビオータを鶏の飼料に混ぜることにより鶏の腸内環境を整えることに成功。
2022年12月19日
【ロオジエ オヴェルデ エクストラバージンオリーブオイル】
~「マイクロバイオーム農法」と「マイクロバイオーム・ガストロノミー」~

10月下旬、シェニョンシェフはスペイン南海岸のアリカンテにある「オヴェルデ王国」をオリーブの収穫のために訪れました。
1年のうち345日間も太陽が降り注ぐと言われるだけあり、滞在期間中も毎日雲一つない晴天でした。もともと海底だったという30ヘクタールもある広大な土地「オヴェルデ王国」には数千年の歴史があり、ローマ時代、段々畑のようにテラス状に土地が整備された跡が今も鮮明に残っています。
「オヴェルデ王国」には最も古いオリーブの品種と言われている「ロイヤル・カソルラ(Royal Cazorla)」が888本、ハートの形に植えられています。一見すると豊かな土壌とは思えない、石灰質で非常に乾いた土地に、樹齢100年~1000年の木々が大粒のオリーブを実らせていました。
また、この時期は在来種のザクロの収穫時期でもあり、オリーブの木立の隣にはザクロの実がたわわに実っていました。日中はザクロの皮が日焼けするほどの日差しです。雨がほとんど降らず、日光が強く降り注ぐ過酷な気候がかえって土壌や木々に棲む微生物を強くしているとイノベーションラボの微生物博士イデアス氏*¹が「マイクロバイオーム農法」について説明をしてくれました。
「ここには数千年かけて作られた独自の微生物の生態系があります。オリーブの木の周りに植えられたイチジクやグレープフルーツ、ザクロなどの木、ハーブや野菜もこのエコシステムの中で土壌を通じて互いに密接に結びついています。これらが微生物叢*²とその代謝産物から恩恵を受けているため、ビタミンやミネラル、乳酸菌が豊富な果物や野菜を収穫することができるのです」
収穫は満月の日、オリーブの実が香り、味覚、栄養価において最高な状態に至った時に行われました。一つ一つ丁寧に手摘みされたオリーブの実は伝統的な方法で低温圧縮され、風味を損なわないようフィルターを通さずに瓶に詰められます。オリーブ収穫後からオリーブオイルになるまで約3時間、「オヴェルデ」の語源、スペイン語「Oro Verde」(緑の金)が示すように、緑がかった金色に輝くエクストラバージンオリーブオイルの誕生です。
自然の力が凝縮された「ロオジエ オヴェルデ エクストラバージン オリーブオイル」は少しスパイシーで、ミディアムな辛味があり、非常にフルーティ。そのフルーティさは周りに植えられている果物の木がオリーブに影響を与えているとか…。
「ゼウスと呼ばれる樹齢2300年のオリーブの木に触れたとき、何とも言えない自然の力を全身に感じました。穏やかな静寂の中、木々に囲まれながら、オリーブの収穫をしている間中ずっと私は大地から自然の力をもらっていました。長寿の木の横には美しい泉も湧いていて、オリーブ収穫の後、その水を飲み、手や顔を洗いました。その泉の水にもマイクロバイオームが影響しているのか、一日中暑い気温の中、オヴェルデ王国を歩き回って過ごしたのに、疲れを全く感じないくらいに癒されました」とシェニョンシェフは語ります。
オヴェルデ王国の微生物叢は、過酷な自然環境でも植物が元気に育つことを可能にしている独自の生態系を持っています。その微生物のエコシステムから着想を得て作られたのが「アクアビオータ(Aquabiota)」という200種から選ばれたラクトバチルス菌のブレンドから生まれたプロダクトです。「アクアビオータ」を土壌に撒くことで独自の微生物の生態系が生まれ、化学肥料や農薬を使わなくとも、害虫を寄せ付けない有機農業ができるという仕組みです。
「マイクロバイオーム農法」で作られた食材はビタミン・ミネラル等の栄養価を豊富に含みます。この農法で作られた食材を最大限に使って調理することにより、「健康と長寿」を可能にする『マイクロバイオーム・ガストロノミー』が生まれます。

「マイクロバイオーム農法を日本でも広めていきたいと考えています。そのためには農業従事者の方々にこのマイクロバイオーム農法について、まず知ってもらいたいと思います。マイクロバイオーム農法で作られた食材を使って調理をすることが、私が提唱している『マイクロバイオーム・ガストロノミー』です。これからの料理は美味しいだけでなく、人の健康にインパクトがある料理であるべきだと思います。料理を楽しみながら、健康にもなれる料理を提供すること、それを可能にするのが『マイクロバイオーム・ガストロノミー』です。私はこの『マイクロバイオーム・ガストロノミー』を実践していきます」とオリーブの木々からインスピレーションを得たシェニョンシェフは今後の意気込みを語ります。

*¹ イノベーションラボの微生物博士イデアス氏とシェニョンシェフは「マイクロバイオーム農法」の普及活動を開始しました。「ロオジエ オリジナルティー」(2022年2月発売)に使用している茶葉、茶葉にブレンドしている果物やスパイスもマイクロバイオーム農法で栽培しています。
*² 生態系における微生物の集合
2022年11月10日
【ロオジエのエディブルフラワー】

今回シェニョンシェフが訪れた生産地は、長崎県松浦市のエディブルフラワーの農園。海が見渡せる眺望の良い集落の中に、食べることができる花、エディブルフラワーの温室があります。生産者の前田さん家族は先代から園芸用の植木を栽培していましたが、食用花に魅せられてからは、一年中、食用花を出荷できるよう温室内でも様々な品種の色とりどりの花々を育てています。
「今まで食べることができるとは知らなかった花もあります。これまで育てたことがなかった食用花の栽培に挑戦することがとても楽しいです」と目を輝かせながら情熱的に話す姿にシェニョンシェフも共感を覚えました。
興味を持って次々とエディブルフラワーを試食していくシェニョンシェフに、前田さんも次々と花の名前や特徴を教えてくれます。色や形の違いだけでなく、味わいや香りもそれぞれ微妙に異なるエディブルフラワーにシェフは奥深さを感じました。
「こうして自然に恵まれた環境の良い場所で、前田さんが大切に育ててくれた花が私の料理の上でも咲いていると思うと感慨深いです」とシェニョンシェフ。
シェフがロオジエのために好んで注文する花は、黄色や紫のサイズが小さめのエディブルフラワー。お皿の上の食材を邪魔しない程度に彩りを与え、微かな香りと風味を添えます。シェフはお皿の上に絵を描くように、調理した食材を配置し、エディブルフラワーを添えます。最後にフランス料理の命ともいえるソースを加え一品が完成。
毎月季節に合わせて変わるロオジエのダイニングに飾られたダイナミックなフラワーアレンジメントとは対照的な、可憐な花々をシェニョンシェフの一皿の上でお楽しみください。
2022年6月10日
【フィンガーライム(シトロン・キャビア)の魅力】

オリヴィエ・シェニョンがこだわっている食材のひとつがフィンガーライムです。
指の形をした柑橘類「finger lime」は、プチプチとした果肉の食感がキャビアに似ていることから、フランス語では「citron caviar (英語:caviar lime)」(シトロン・キャビア)と呼ばれています。
ロオジエで提供している料理でフィンガーライムを使った料理の一例が、ホタテ貝の上にチョウザメのキャビアとフィンガーライムの果肉をあしらった一品です(キャビア・オシェトラ メイクイーンのボンボンと三陸産ホタテ貝のラメル 宮崎産フィンガーライム サフラン風味のソースシャンパーニュ)。プチっとはじける果肉が彩りと爽やかさを添えています。
フィンガーライムはオーストラリア沿岸地域の乾燥した熱帯雨林原産の柑橘類で、品種も多岐にわたり、緑、黄、赤、ピンク等の美しい色彩の果肉が特長です。
オーストラリアから世界に輸出され始めたのは2000年頃で比較的新しい食材と言えます。
日本国内での生産はごく僅かで貴重な食材です。今回、シェニョンが訪れたのは宮崎県宮崎市のフィンガーライムの生産地。年間を通じてロオジエがフィンガーライムを食材として使うことができる理由は、主に二人の生産者さんが温室で大切に栽培してくれているからです。フィンガーライムは寒さに弱いと思われてきましたが、実際に栽培してみると比較的寒さに強く、冬でも温室を温めるエネルギーをあまり使うことなく育てることができます。また、温室での栽培は害虫の心配も少なく、無農薬で有機栽培ができることも分かったことからです。
生産者の丸山淳さんは「果肉の色彩だけではなく、風味や香りも品種によってこんなに異なります。この香りを嗅ぐだけでも幸せな気分になれますよね」とシェニョンがまだ試したことのない品種を試食させながら語ってくれました。
もう一人の生産者、長友紘子さんは数種類のフィンガーライムを5年前から栽培し始め、土壌に合った品種ミア・ローズ(MIA ROSE)とレッド・ルビー(RED RUBY)を中心に生産し、ロオジエに直送しています。長友さんは「私が育てたフィンガーライムの美味しさをさらに引き立ててくれる料理をシェニョンシェフが作っていると知り、とても嬉しく、励みになります」とおっしゃっていました。
今回の訪問を通して、フィンガーライムという高級食材を栽培する生産者にとって、安定的に使用するレストランがあることが生産を続けていく上で励みになっていると知ったシェニョンは、食材を作る側と使う側がコミュニケーションを取ることの大切さを改めて実感しました。
キャビアのように輝くフィンガーライムの果実はこれからもシェニョンに新たな一皿のインスピレーションを与え続けることでしょう。
2021年11月17日
【ロオジエオリジナルティー/Tea for two project~紅茶を通じたSDGsの取り組み~】

エグゼクティブシェフのオリヴィエ・シェニョンが「旅するコンセプト」でロオジエオリジナルティーを生み出しました。
オリヴィエ・シェニョンはスリランカの女性たちが自立できるよう、20年以上前から女性のエンパワーメント支援活動を続けている非営利の慈善団体 「ファム・ドュ・モンド財団」(Femmes du monde)と共に、スリランカの紅茶生産に携わる女性たちを応援しています。
ロオジエオリジナルティーは、「誰かと一緒に紅茶を飲みながら大切なひと時を過ごす」という幸せを、紅茶作りに携わるスリランカの女性たちと共有する「Tea for Twoプロジェクト」から誕生した紅茶です。
茶葉の栽培、お茶摘み、紅茶製造、テイスティング、品質管理、パッケージング、輸送に至るまで、紅茶に関わる仕事の90%以上に女性が携わっています。
ファム・ドュ・モンド財団は一連の紅茶製造工程を女性が働きやすい持続可能なシステムに変え、働く女性に教育と技術をもたらし、仕事に対する喜びや情熱を生み出しています。
一杯のロオジエオリジナルティーは、スリランカで紅茶に携わる多くの女性たちとその家族の幸せな暮らしを支えることにつながっています。
また、ロオジエのサスティナビリティの取り組みの一環でもある食材選びの中で、環境保護につとめ、今も昔と変わらない大自然を守っているブータン王国のターメリックが、ロオジエオリジナルティーのフレーバーの一つとして使われています。
オリヴィエ・シェニョンが得意とする食材と食材の繊細なコンビネーションが活かされたロオジエオリジナルティー。
この紅茶に携わる女性たちの笑顔が次々と生まれていくことを願っています。

ロオジエオリジナルティー4種:

1. Jardin Secret ジャルダン・スクレ (秘密の園)
スリランカ中央に位置するディンブラ村の秘密のプランテーションで手摘みされたプレミアム・ブラックティー茶葉。
フランス・シャンパーニュ地方の樽職人により伝統的な製法で丁寧に作られたオーク樽の中で茶葉を熟成させることで、特別な深い味わいがもたらされています。このシャンパーニュ産オーク樽は「伝統的な傑出した技術を持つ企業に対してフランス政府が発行するEPV(無形文化財企業)」ラベルを取得、オーク樽により茶葉に繊細なニュアンスを与えるという工程は特許も取得しています。
花のようなアロマが口にいっぱいに広がるリッチな茶葉、スモーキーかつ洗練されたアロマとテイスト。フルーティーさにバニラ、レーズン、木香が程よく感じられるリッチでストラクチャーのある味わいです。
原材料:
スリランカ産ブラックティー茶葉(ファム・デユ・モンド財団運営プランテーション)

2. Douceur d'Alicante ドゥサール・ダリカンテ (アリカンテの安らぎ)
最初にグレープフルーツが感じられ、次にチェリーが口いっぱいに広がるフルーティーなブレンド。カルダモンの余韻が印象的なアロマとテイスト。有機無農薬栽培の果実から抽出された天然エッセンスがスペイン・アリカンテの穏やかな風景を想起させます。
原材料:
スリランカ産ブラックティー茶葉(ファム・デユ・モンド財団運営プランテーション)、スリランカ産(スリランカ中央部キャンディ)カルダモン、スペイン産(アリカンテ県)チェリー天然エッセンス、スペイン産(ヴァレンシア県)グレープフルーツ天然エッセンス

3. Rêve du Bhoutan レーヴ・デュ・ブータン (ブータンの夢)
ブータン王国のロイヤルファミリーが運営する農園で作られたターメリック、マダガスカル産バニラ、スペイン産ヴァレンシアオレンジ天然エッセンス、フランス・ヴェルサイユの「王の菜園」で栽培された洋ナシの天然エッセンスから生まれた特別なブレンド。
スパイシーでありながら繊細なターメリックの味わいにバニラの滑らかな優しさが加わり、最後にフルーツの甘さが感じられます。
原材料:
スリランカ産ブラックティー茶葉(ファム・デユ・モンド財団運営プランテーション)、ブータン産ターメリック(ブータン王国ロイヤルファミリー、グランマザー・クイーン運営農園)、スペイン産ヴァレンシアオレンジ天然エッセンス、フランス産洋ナシ(ヴェルサイユ「王の菜園」)天然エッセンス

4. Touche Millénaire トゥシュ・ミレネール (千年の調べ)
フランス・ヴェルサイユ「王の菜園」で栽培されたリンゴとバラの天然エッセンス、バラ花弁、岩手県大船渡の椿リーフ*、スペイン・アリカンテ県の樹齢1000年のオリーヴリーフから生まれた特別なブレンド。力強いバラのアロマとテイストに繊細なリンゴのニュアンスが加わり、椿とオリーヴのリーフによりバランスがもたらされています。

原材料:
スリランカ産ブラックティー茶葉(ファム・デユ・モンド財団運営プランテーション)、フランス産リンゴ(ヴェルサイユ「王の菜園」)天然エッセンス、フランス産バラ花弁(ヴェルサイユ「王の菜園」)、フランス産バラ(ヴェルサイユ「王の菜園」)天然エッセンス、岩手県産カメリアリーフ(大船渡市の椿)、スペイン産オリーヴリーフ(アリカンテ県・オヴェルデ樹齢1000年オリーヴ)

*資生堂が復興支援のために植樹をした岩手県大船渡市からの椿の葉を使用しています。
2020年11月27日
【ロオジエの持続可能なガストロノミー】

「美しい環境を守らなければ、美しい食材を得ることができず、美しい食文化も次世代に残せない」という危機感を持ちながら、「食」という側面から、サステナブルな取り組みを本格的に進めています。
使われる多くの食材は持続可能な漁を実践している一本釣りの魚であり、環境に配慮した養鶏場からの地鶏・卵、また有機無農薬栽培で収穫される野菜です。
11月上旬、シェニョンが訪れたのは和歌山県南部にある古座川町という山間の町。東京23区の半分程の広さに、人口はわずか2700人程度。面積の約96%が山林で、数々の清流が流れています。そこに大阪や京都から、若手の生産者さん達が集まる農園があります。
多様な微生物が共生する土壌を自ら作り、農薬・化学肥料・動物性肥料を使用しない自然農法で野菜と食用薔薇を育てています。動物性の肥料も使わない理由は、家畜が口にした抗生剤や飼料の農薬が畑や作物を介し、食べた人の体内にまで入ってしまうのを避けるためとのこと。シェフが訪れたこの日、竹と建築廃材を再利用して、若者たちが栽培用ハウスを作っているところでした。
「私たちにできるのは、作物を作り、送り出すところまで。実際に選んでいただいて、食べていただいて、初めて意味を持つと思うのです」と生産者の土井さん。シェニョンは「あなた方が大切に育てている食材を私が選び調理をし、それをロオジエのお客さまに味わっていただくことで、この取り組みが完結するんですね」と語りました。生産者と消費者の架け橋となる料理人という役割。「美しい自然を守りながら、美味しいものを作りたい」という思いを持った若者たちが集まる古座川町の魅力を感じる「食材の旅」でした。
香りが口いっぱいに広がる薔薇はロオジエのデザートに登場します。
2020年3月24日
【FROM OCEAN TO PLATE —— 持続可能な漁を考えるロオジエのひと皿】

 オリビエ シェニョンが得意とする魚料理のひとつに、長崎県産の“ハタ”や“クエ”を使った「のり巻き風スタイル」と呼ばれるアラカルトメニューがあります。

 たとえば、今年2月に登場した 「海苔巻きに見立てたハタと黒トリュフ 潮の香るプティ・ポワのエミュルション」は、その日の早朝に水揚げされたばかりのハタ、クエの身を筒状に巻き、上には魚のムースを、まわりには薄くスライスしたトリュフをうろこ状に敷きつめて蒸し上げるひと品。長崎でも年々希少な魚種となっているハタやクエは、ぷりっと弾力がありながらしっとりとしたテクスチャーをシェニョンが気に入り、ロオジエのキッチンでも通年、仲買人から直に仕入れている特別な食材のひとつです。

 わずかに春の兆しを感じる2020年2月、今年初となったシェニョンの産地視察先は、そのクエ・ハタを仕入れている長崎県長崎市京泊の「長崎魚市」。毎朝早朝、信頼をおく仲買人との電話のやりとりでその日の水揚げを知り、競り落とした魚を即日直接空輸でロオジエのキッチンに届けてもらうスタイルが常ですが、この日はその仲買人たちの案内で「長崎魚市」内を初視察。市場に朝4時半に到着したシェニョンは、度々足を運んでいる築地や豊洲市場とはまた異なる市場の雰囲気を肌に体感しながらも、常にTOP OF THE TOPのクオリティーにこだわり、上質な鮮魚を選りすぐる仲買人たちの熱意に心打たれた様子です。

 キッチンに立ちながら、自らも本格的に環境保護に取り組もうと考えるシェニョンにとって、毎年漁獲高トップ5に入る長崎漁港でも年々漁獲量が減っているという話は気にかかるニュースのひとつ。「長崎の漁師が減ったのか、魚が減ったから漁師が減ったのかはわからない」という仲買人たちの話に、「シェフとして自分も何らかのアクションを起こさなくてはならない時期に来ていることを感じた」とシェニョンは言います。
 「シェフとして今できることは、底網漁のように魚の稚魚まで一網打尽に獲ってしまう漁で得られた魚よりも、一本釣りで獲られる魚を仕入れる考え方に切り替えていくこと。生態系が守られた美しい漁場から美味しい魚を獲り続けられるよう、料理人ができることは何かを、ひとつひとつ考え続けていきたい」と言います。
2019年8月27日
【しなやかに空間と呼応する、D.ポルトー社のテーブルリネン。】

ロオジエのテーブルウェアに散りばめられる数々のストーリーの中から、ピュイフォルカのカトラリーに次いでご紹介したいのは、D. ポルトー社のテーブルリネンにまつわるお話です。


ロオジエのサービススタッフひとりひとりが、日々心を配るテーブルリネン。テーブルにかけられるアンダークロスとトップクロス、ナプキンにいたる3種のテーブルリネンはもとより、サービススタッフがもつトーションや、バーナプキン、パウダールームのハンドタオルにいたるまで、ロオジエで使用されるほぼすべてのリネン類がフランスの老舗、D.ポルトー社に特注して調えられていることをご存知でしょうか?

D.ポルトー社は、英国のロイヤルファミリーやフランスの歴代大統領はじめ、各国王室やセレブリティーに愛されるフランス屈指のリネンメーカー。 1920年の創業以来、その繊細な縫製やなめらかな肌触りなどから、ホームリネンはマリリン・モンローやカトリーヌ・ド・ヌーヴ、ジャクリーヌ・ケネディーにも愛用されていたと言われています。

生地はすべて、フランス北部の街・カンブレーにある自社アトリエで織られ、裁断、縫製、刺繍にいたる製造のすべてを一貫管理。専属デザイナーも抱え、シンプルさのなかにD.ポルトー社ならではの品格ある意匠を継承しながら、フランスの職人技を活かした質の高いオーダーメイド品も多く生み出しています。


1986年以来、D.ポルトーのリネンにこだわってきたロオジエでは、2013年秋のリニューアルに際してテーブルリネンを一新。同社専属デザイナーが提案した数種のデザイン画の中から選ばれたのが、ロオジエの内装デザインを手がけたピエール・イヴ・ロションによる“たち昇るシャンパンの泡”のモチーフです。

繊細な泡のテクスチャーを表現するうえで選ばれたのは、縦糸と横糸を不規則に織ることで立体的なモチーフが生まれるジャカード織の技術。ナプキンには「ジュールエシェル」と呼ばれる特別なステッチで縁仕上げを施すなど、細部にD.ポルトー社が長年培ってきた最大限の技術が散りばめられています。

そのD.ポルトー社でロオジエのリネンを長年担当しているクルトン氏はこう言います。「ロオジエは私たちにとって単なるお客さまではありません。パリの名だたる三ツ星レストラン数軒にもリネンを提供していますが、生地選びから縫製、刺繍にいたるまで、1からオリジナルのリネンづくりに携わることができている唯一の存在として、ロオジエは私たちの世界観を伝えてくれるパートナーのような存在でもあるのです」

クルトン氏がこれまで手がけたなかで「もっとも誇るべき作品のひとつ」と讃えるテーブルリネン。その美しいテクスチャーをぜひ、ロオジエにてご体感ください。
2018年10月25日
【手から手へ。心を伝えるカトラリー】

ロオジエの“心”を表現するうえで、欠くことのできないパートを担うのが「ピュイフォルカ(PUIFORCAT)」のカトラリーです。「ロオジエ」では1999年 銀座・並木通りへの移転を機に、店で扱うすべてのシルバーをフランスの老舗銀器メゾン「ピュイフォルカ」に統一。総数900本となるテーブル用カトラリーをはじめ、今ではミュージアムピースとも言える芸術的な逸品であるテーブルサービス用のプラッター、シュガーポットなど、現代では物理的に購入不可能ともいえるピュイフォルカ製品の数々が選ばれました。以来今日にいたるまで、日本国内のどのレストランも収集し得ない数のピュイフォルカ・コレクションが大切に受け継がれ、現在もエグゼクティブシェフ オリヴィエ・シェニョンの料理と共に、日々のお客さまへのサービスに用いられています。
 「ロオジエ」と「ピュイフォルカ」。ともに職人技を重んじるメゾン同士が紡ぎ出してきた歴史、そしてエピソードは数知れず。長年サービススタッフを率いてきた支配人・内堀泰彦においても、「ピュイフォルカ」と共に歩んできた時間には他ならぬ想いがあると言います。
 「この銀器にはロオジエのサービスの真髄にある“お客さまを敬う気持ち”が込められています。丁寧につくられたお料理を、丁寧に運ぶ。当たり前のことですが、未だにひと皿ごとシルバーのプラッターでテーブルまで運び、提供するスタイルを貫いているフランス料理店は、ここ東京でもかなり希少になってきているのは事実です。スタッフが重いプラッターを手に手に、厨房とテーブルを何十往復も行き来する。脈々と受け継がれるこのスタイルの根底にあるのは『すべてはお客さまのために』という創業当時から変わらぬ想いです」
 ロオジエでは若いスタッフにまず、これらの銀器を丁寧に扱うことが徹底的にたたきこまれます。ランチとディナー、1日2回のサービスごとにひとつひとつをやわらかい布で丁寧に拭きあげる作業も、日々のルーティンとして欠かせません。常に万全な状態に磨き上げる作業を積み重ねることで、手に感じる重みと価値をリアルに体感し、徐々にサービスに傾ける想いや姿勢も変わっていくのだと内堀は言います。
 「ピュイフォルカという特別な銀器を通してお伝えしたいのは、約20年間、変わらぬ輝きを保つために費やしてきた時間と想い。“日本の最高峰のお料理とサービスをお届けする”という自負・誇りなのです」

----------------------------------------------------------------

ピュイフォルカ|PUIFORCAT:1820年、オルフェーヴル(金銀細工工房)が集まるパリ・マレ地区でエミール・ピュイフォルカによって設立された「現代銀器の最高峰」とも言われるフランスの老舗銀器メゾン。最高純度の銀を用い、職人が丹念に仕上げたカトラリーは大統領官邸エリゼ宮の晩餐会でも使われている。職人の技術・伝統を守り続けるため、1993年よりエルメス・グループの一員になっている。
2018年4月25日
【驚くほどの存在感。オホーツクの海で出会った「北海道産毛ガニ」】

「ロオジエのこのひと皿が食べたくて」という声をいただく料理のなかでも、初春から初夏にかけてのこの時期、ご予約の際に特にリクエストいただく人気のひと品が「北海道産毛ガニ」を使ったアラカルトの数々です。たとえば3月末頃から5月頃にかけて登場する「北海道産毛ガニとクルスタッセのロワイヤル」もそのひとつ。クルスタッセ(甲殻類)のロワイヤルの上に、ふくよかな食感と甘みをたたえたカニのほぐし身をたっぷりのせ、その内側にはアスパラガスのアイスクリームを。クルスタッセのクリームをつめた蕪の酸味、グリーンアスパラガスのシャキシャキとした食感、ロワイヤルとアイスクリームの異なる温度のコントラストのなかで、驚くほどの存在感を放つ毛ガニの風味は格別なものだとエグゼクティブシェフ オリヴィエ・シェニョンは言います。
 今回、シェニョンが訪れたのは、その豊かな味わいに心を掴まれて以来、直接活きたままの状態で取り寄せているという、こだわりの毛ガニの水揚げ地、北海道紋別郡興部(おこっぺ)町・沙留(さるる)。豊富なプランクトンが回流する沙留の海は、オホーツクの豊富な海産物を誇る港町。シェニョンが訪れた3月末は、ちょうど流氷が去ったあとに獲れる希少な高級毛ガニ「海明け毛ガニ」の漁が最盛期で、脱皮から時間が経っている(体が硬く身がしっかり詰まっている)格付け最高ランクの“堅蟹(かたがに)”が獲れる時期でもあります。
 シェニョンは、早朝の漁を終えたばかりの船から豊漁の毛ガニが水揚げされる様子に、にわかに興奮の面持ちで、さっそく茹であげたばかりの獲れたてを試食。「甲羅の内側にびっしり身が詰まっていますね。このつまり具合や身質の繊細さは、やはりインパクトがあります。水分が少なく身が締まっているので、甘みにも凝縮感がある。茹でるとさらに綺麗な赤色となる色味の美しさも、紋別産毛ガニの魅力なのだと思います」
 この興部町沙留の漁港から、活きたままロオジエの厨房へと届けられるこだわりの毛ガニ。シェニョンはそのごく繊細なテクスチャーや甘みを逃さぬように、白ワインと野菜とともにゆっくり時間をかけて茹で上げ、ぷるんと張りのある身質のすばらしさとふくよかな風味を余すことなく表現します。クルスタッセのロワイヤルをはじめ、北海道毛ガニの魅力を様々な手法でご提案するアラカルトの数々は、季節毎の旬の食材とともに8月頃までお楽しみいただけます。
2017年11月10日
【八海山サーモン】

2017年春の出合い以降、エグゼクティブシェフ、オリヴィエ・シェニョンが虜になった食材のひとつに「八海山サーモン」がある。その呼び名に“鮭”を思い浮かべるのだが、実の正体は虹鱒(ニジマス)。もちろん想像に難くなく、一般的な虹鱒とはかなり異なる手法で育てられた魚種で、銘酒の名称でも名高い霊峰・八海山の湧き水を引いた限りなく天然に近い環境のなか、通常の1.5倍以上もの長い養殖期間を経て育てられた大型の虹鱒である。

 八海山から湧き出たミネラル豊富な一番水のみを使用し、低水温でゆったりと時間をかけて育てられることから、川魚の臭みがなく余分な脂ものらない。卵も白子も持たないため、身に蓄える旨みを余すことなく味わうことができる。「鮭と比べて脂肪分が低く、脂はさらりとしたキレがあり、引き締まった身の食感は極めてまろやか。とにかく、口の中にふくんだ瞬間に広がるテクスチャーが素晴らしい」。シェニョンの熱い語り口からもわかるように、フレンチのコンテンポラリーキュイジーヌに携わる料理人にとって、なんとも腕がなる食材なのだ。

 この「八海山サーモン」の類い稀な風味にインスピレーションを得て生まれた一品が、「LE CAVIAR OSCIÈTRE / キャビア オシェトラと八海山サーモンのミ・キュイ ポワローのクリームとコンディマン〈禅〉そば粉のブリニス」。アラカルトで味わえる人気のひと皿である。

 美しい色味と繊細なテクスチャーを表現するため、隙き間のないロール状に巻き上げた「八海山サーモン」は、低温でゆっくりミ キュイ。身が口の中でなめらかにほどける程度に丁寧に火入れしたうえでカットし、大地の旨みをたっぷり蓄えたポワローのクリームの上に重ね、レモンの果肉とゼストをのせる。脇にたっぷり添えるのが、ヘーゼルナッツのようなコクと旨みをもつキャビア オシェトラ。余分な脂を持たない「八海山サーモン」とこの上ないハーモニーを奏で、すべてが合わさった瞬間にある種の高揚感に満ちた“甘美なる世界”が完成する。

 京都の禅寺にインスピレーションを受け、“日本庭園(石庭)”をイメージしたというコンディマンも印象的だ。卵の白身と黄身をそれぞれ庭の石に見立て、ケッパーとビーツで色づけした玉ねぎ、シブレット、上にはひと粒ひと粒キャビア オシェトラをのせ、細密なる禅の世界が表現される。同時にサーヴされるブリニスで、「八海山サーモン」、キャビア、ポワロー、コンディマンを包み込めば、そば粉の薫りとの新たな出合いも体験できる。

 旨みとコク、香味、酸味、苦み、甘味……口中にてミクロレベルで融合しながら構成される味覚の五角形を愉しみながら、シェニョンの心を捉えた素晴らしき食味「八海山サーモン」の世界へとしばし旅してみたい。
2017年7月24日
【くまもとあか牛】

松阪牛や近江牛、神戸牛など、特に90年代以降の高級和牛ブームをけん引してきた“日本三大牛”をはじめ、米沢牛、飛騨牛、岩手や北海道の短角牛、近頃では赤身肉ブームなどの波に乗りニュージーランド牧草牛やフランスのシャロレー牛などの人気も高まっている。その数ある選択肢のなかから、当店エグゼクティブシェフ オリヴィエ・シェニョンの心を捉えたのが、阿蘇山の麓で育まれる「くまもとあか牛」だ。

九州のほぼ中央。世界一のカルデラを誇る阿蘇の豊かな自然に恵まれた大地のもと、ふくよかな恵みをたたえた良質な水、澄んだ空気、緑豊かな田園風景に囲まれてのびのびと育てられる「くまもとあか牛」。その魅力は、ほんのりとサシが入りつつも余分な脂分がなく、ほど良い噛みごたえのある赤身を主体にした繊細な肉質。噛めば噛むほど口中にあふれ出る“甘み”や“旨み”、牛肉本来の香りや豊かな風味と和牛としてのコクを併せもっている点にある。

あか牛の素晴らしい食味に感銘を受けたシェニョンは今回、銘産地として知られる熊本県菊池市で親子二代にわたり肥育農家を営む斉藤栄喜(えいき)さん・誉尚(やすたか)さん親子のもとを直接訪問。彼らの情熱に触れたことで、あらためてこの食材に深い敬意をはらうようになったという。

「そのクオリティ、テクスチャー、特にサシの割合が少ないこと。あか牛は私の料理においてまさに理想の牛肉なのです。熊本では生産者のみなさまとの素晴らしい出会いがありました。その生活はあか牛たちを中心にまわり、すべてはあか牛に対する情熱と意欲と愛によって成し遂げられている。何よりも印象的だったのは、日々丁寧に整えられる美しい環境のもとで過ごす幸せな動物たちの姿です」

ストレスのない環境で心地よく過ごせるよう24時間体制で整備される牛舎。牧草や稲わらで反芻機能を育てた後、とうもろこしや麦の粉など、地元・熊本産の穀物中心の飼料で愛情をこめて育てられる「くまもとあか牛」。健康志向や赤身肉人気で年々需要が高まる一方で、その生産量は震災などの影響からまだ思うようには伸びていないという。


厨房でこの食材を手にするたび、シェニョンは自らの気持ちを奮い立たせる。「熊本で出会ったみなさんの並々ならぬ情熱。あらためて感じた食の感動。希少な素材を慈しみながら、愛情と敬意をもってひと皿ひと皿に表現していきたい」




※前頁写真は右から生産者の斉藤栄喜さん、斉藤誉尚さん親子、オリヴィエ・シェニョン
2017年4月27日
【自然への敬意を感じずにはいられない、素晴らしき「海からの贈りもの】

「黒鮑(あわび)のバターポッシェ」と言えば、2013年の「L'OSIER」リニューアルオープン以来、エグゼクティブシェフ オリヴィエ=シェニョンのスペシャリテとして多くの人の心を捉えてきた料理のひとつ。この料理は1年を通じて“最良の国産黒鮑”が入荷した時のみコースの前菜として登場していたのだが、「またぜひ味わいたい」という声に応えるかたちで、アラカルトメニューに加えられた人気のひと品だ。

オリヴィエと国産黒鮑の出会いは、彼が来日まだ間もない頃に訪れたという鉄板焼きレストランでのこと。鉄板の上でまたたく間に蒸し焼きされた黒鮑は、フランス・ブルターニュでわずかに水揚げされる小粒の鮑とはまったく異なる食感・風味。これがオリヴィエの味覚にかつてないセンセーショナルを巻き起こしたのだ。

今回ご紹介する「房州黒あわび」は、その国産黒鮑のなかでもずばぬけて身質がよく、1個あたり貝付きで500〜600gという希少な特選食材。黒鮑の産地として名高い南房総・千倉で、海女漁が解禁される5月1日から9月15日の間のみ出回るのだが、先述した500〜600gのものは地元でも「10年もの」として高値で取り引きされる。出荷先でも言わば「取り合い」のような状態になる希少食材なのだ。

漁期にあたるこの時期、黒鮑は10月の産卵期に向けて積極的に栄養を蓄えるため、主に海底を漂う昆布のミネラル分をたっぷり吸収し身質もふっくらと肉厚になる。鮑は加熱するとどうしても痩せてしまうのだが、「房州黒あわび」は火入れしても身はふっくらとしたまま。ほど良い弾力を保ちながらもしっとりとやわらかいのが特徴だ。

「黒鮑のバターポッシェ 花紫蘇添え 岩海苔入りブルグールのリゾット 生雲丹のブイヨンソース」は、この特選素材が入荷する時期にぜひ味わっていただきたい料理のひとつ。「房州黒あわび」の繊細な食味を最大限引き出すため、調理前には和の手法を用い“大根と日本酒”とともに蒸し上げる。その上であらためて、貝のジュとバターにゆっくり絡めながらポッシェ。下に敷くブルグールのリゾットに忍ばせた岩海苔や、貝のジュをベースにした雲丹のソースと絡み合うことで、磯の香りと旨み、奥深い風味や食感が口の中で何層にも重なりあう。豊潤極まりない海の贈りものが、ひとくちごとに深淵なるマリアージュを繰り広げるのだ。



「房州黒あわび」に傾けるオリヴィエ=シェニョンの想いの深さは、こんな言葉からも読み取ることができる。

「出逢えること自体に幸せを感じ、自然への敬意を抱かずにはいられない食材のひとつです。調理場で手にした瞬間から皿に盛りつける瞬間まで、すばらしい海の恵みに感謝する想いで調理しています」